最初に雑誌連載をしたときにも書いたことですが、私が富士ゼロックスの研究所を離れ、外資系の会社で、導入コンサルタントとして仕事をすることになったとき、上司から最初に言われた言葉が、「コンサルティングはサバイバルだよ」でした。
それから経験を積んでわかったのは、まったくそのとおりということでした。必ずしも味方ばかりでない土地に行って、自分の知恵を頼りに成果を出して、戻ってくるという仕事です。もちろん客先でボコボコにされて戻ってこれない気の毒な人も珍しくないという素敵なお仕事でした。
私の研修やブログでおなじみの動物のイメージは、基本的にはコンサル現場のイメージです。厳しいお客様(ブルドッグ)、さらに厳しいその上司(ライオン)、圧倒的に強力な客先役員(恐竜)、後ろには怖い自社上司(熊)、ということで、油断をすると食べられてしまうような現場から、自分の腕一つで道を切り開いて戻ってこないといけないのです。
ここで使う武器が、ロジカルシンキングなわけですが、戦略コンサル派のロジカルシンキングは、ナタとか斧とかそういったものだと思っています。戦略コンサルタントで優秀な人は、頭の回転が速く、弁が立ち、カリスマ的な力があります。少々あいまいなところが残っていても押しきれる知的腕力があります。弘法筆を選ばずのたとえのように、少々切れ味が悪い道具でも、どこからでも道を切り開いて戻ってこれるのです。
戦略コンサル派のロジカルシンキングの一番の強みは、報告書や提案書などお金になるドキュメントの作成につながるところです。有用なドキュメントが残せれば、生還できる見込みは上がります。
これに対して、数理論理学派や議論モデル派のロジックは、外科医のメスみたいなものです。精密で、切れ味鋭いのですが、道を切り開いてくるのには不足です。単体の議論にいくら説得力があったとしても、それ自体でお金になるドキュメントにはなりません。ビジネスの現場では、科学技術の検証で必要な精緻な論証は求められません。方向性が明確で、主要な人を説得できるドキュメントが欲しいのです。それを置いてくることができなければ、戻ってくることはできないのです。
技術者出身のスタッフは、弁の立つカリスマというタイプは多くはありません。そこでMALTでは、そういう人にも使えるように、もう少し、切れ味が鋭く、かつ、現場で使える、つまり納得できるドキュメントまで作ることのできるもの、たとえて言うとサバイバルナイフを目指しました。下の図はソードですが、そこはそれ、見栄えの関係です。