なぜ読解力のモデルを内容と構造の2層に分けるべきなのか?

12月31日の記事で、読解力や文書品質のモデルとして、内容か構造かの軸と、形式か内容かの軸の2軸による、4象限のモデルを紹介しました。このモデルで、なぜ内容か構造の2層に分けているのかついて説明します。

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読解力モデルのもとになっている文書品質のモデルのほうで説明しますが、理由は、内容の観点での品質と構造の観点での品質は独立に評価できるからです。内容観点の品質とは、「てにをは」、係り受け、誤字脱字がないか、正確な記述になっているか、など文章自体を評価する観点です。

構造観点の品質とは、論理的な構造として主張と根拠が適切に組立てられているのか、課題分析の構造として問題と原因が適切に組立てられているのか、など記述の間の関係を評価する観点です。

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内容観点での品質が不足していても、構造が明確になっていれば資料の意図を理解することができます。このことは、PowerPointによるプレゼン資料を考えてみると分かると思います。プレゼン資料で記述される文の多くは、文として完成していません。接続詞のない箇条書き、体言止め、単語だけのことも少なくありません。書き方にもよりますが、こうした資料でも、口頭発表による補足がなくても意図を伝えることができます。

これは、資料全体のページ構成とページ内の構造があるからです。構造がない単語の羅列で意図を伝えることはできません。反対に、内容の品質のレベルがいくら高くても、それによって組立てられている主張が明確でなかったり、納得感がなかったりすれば、資料としての価値は下がります。

読解力についても全く同じ議論ができます。文章内容を正確に理解できる力と、構造を正確に把握できる力は異なります。すべての単語の意味と詳細な文法がわからなくても、構造を全体の意図を把握することができます現実の文章を読解する場合、正しい文ばかりではありません。正しい文からでなくては議論の骨格を捉えられないというのでは現実の課題解決はできません。