MALTオリジナルとなる3層論理構造モデルを導入

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ここで、3層の論理構造と呼ぶモデルを導入します。これはMALTにおけるオリジナルなところで、2冊目の本でMALTv3をまとめるときに加えたものです。地味ですが説明表現上のブレークスルーです。これについては長くなるので、じわじわ説明していきます。

話の入り口としては、前回の続きからです。一番最初の三段論法くらいまでは、数理論理学系でも、議論モデル系も、戦略コンサル系も似たようなものです。そこからそれぞれ違う方向へ進んでいきます。

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数理論理学は、記号を使った数学へと進み、一般の人々の日常には無縁のものになります。議論モデルは緻密な議論をするためにディベートや科学技術の論証へ進んだので、専門家のニッチな範囲にとどまっています。戦略コンサル系は、ドキュメントの構成という方向へ進み、経営企画の領域においてデファクトと呼べるほどに普及しました。なんと言っても、提案書やコンサルタントの報告書など、お金に直結するものがメインの対象なので強いです。

さて、実用性の観点で上の例を考えてみると、三角ロジックの説明には違和感があります。議論モデルでは「日常の議論でワラントは省略されることがある」とされます。これは正しいのですが、表現はむしろ反対に、ワラントは普通省略される、くらいが適切だと思います。上の例で「魚は泳ぐ」は普通いらないですよね。

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同じように、戦略コンサル系のヨコ方向はMECEの関係になっていれば論理的という説明にも、違和感があります。MECEはモレなくダブリなく、という意味ですが、だとすると上のような省略はだめで、論理的とは言えなくなります。これは、MECEのような基準はかなり抽象度の高いところでの分け方に関するもので、上の例のような些細な記述に適用するものではないからです。

MALTでは次のように表現します。点線のところはコンテキストと呼びます。明示的ではないが論理構造の構造および内容の正しさを判断するのに必要な情報と構造のことです。上の例では省略されているワラントがそれに当たります。(ちなみに「よって」の文字を囲んでいる三角形は三角ロジックへのリスペクトです。)

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なぜこうしているのかというと、根拠となる事柄は省略されていることが多く、しかも、何が省略されているのかをどう想定するのかが、納得感のある論理構造を作るために決定的に重要だからです。この3層の論理構造をWHSLモデルとも呼びます。これらのもう少し詳しい話はまた、じわじわと。