まずは論理的な正しさと意味的な正しさを区別しよう

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このブログでは、あまり込み入った細かい話はしないつもりですが、こだわりのあるところだけひとつ。論理構造を考えるときに、形式(シンタックス)と意味(セマンティクス)は分けて考えたいと思います。端的に言えば、論理的に正しくても意味的には正しいとは限らない。逆に、論理的に正しくなくても意味的に正しいことはある。ということです。

これは戦略コンサル系ロジカルシンキングの解説書にはほとんど説明されることはありません。また、大半の人には細かくてどうでもいい話に聞こえると思いますが、重要な観点です。記号論理学の(少なくとも入り口の初歩的な辺りでは)、明確に区別されています。

私はブール代数の教科書か何かで、論理(論証)の正しさとは、形式の正しさを問うものであって、内容の正しさを問うものではないと書かれていたことが記憶に残っているのですが、手元にある教科書系を一通り探索したのですが、わかりやすく引用できるように明確に言い切ったものは出てきませんでした。

なので、うろおぼえで書くと、次のような例が載っていました。
(1) 魚は泳ぐ。イワシは魚である。よって、イワシは泳ぐ。
(2) 鳥は飛ぶ。イワシは鳥である。よって、イワシは飛ぶ。
(3) 魚は泳ぐ。クジラは魚である。よって、クジラは泳ぐ。

(1)は論証として形式も内容も正しい例。
(2)は論証として形式は正しいが、根拠が正しくなく、結論が正しくない例。
(3)は論証として形式は正しく、根拠は正しくないが、結論は正しい例。
このように、形式は構文論(シンタックス)、内容は意味論(セマンティクス)で、それぞれ分けて考えることができる。論理はこのうち、形式を扱うものである。

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ということが書いてあったように記憶しています。どれも論理構造としては同じです。プログラミングしている人には、シンタックスエラーと実行時エラーという違いでピンとくると思います。

何がうれしいかというと、主張の意味はわからなくても構造までは正しいと判断できるからです。

コエンザイムQ10は抗酸化作用がある。老化には活性酸素が関わっており、抗酸化作用はその抑制に効果がある。よって、コエンザイムQ10は老化の抑制に効果がある。」

と書かれていたとして、バイオ系の知識が全くなくて、コエンザイムQ10とか活性酸素とか何かわからなくても、論証としては正しいと判断できます。こうして形式を整えれば、あとは前提となる内容が正しいことを専門家に確認すれば、主張全体が正しいとわかるわけです。

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以上、細かい話でした。