私と戦略コンサル派のロジカルシンキングの出会いその2は、5年くらい前にも紹介したポーランド国境の戦車のお話です。その頃から世の中いろいろ変わったので、改めて紹介です。
やはり2000年代前半、ウルシステムズでコンサルタントの方から技術者向けのロジカルシンキングのレクチャーを受けたときの話です。論理の理由付けには、演繹法と帰納法があるという説明で、次の例を帰納法の例として説明してくれたのでした。
「フランスの戦車がポーランド国境にいる」
「ドイツの戦車がポーランド国境にいる」
「ロシアの戦車がポーランド国境にいる」
よって、
「ポーランドが戦車によって侵略されようとしている」
これ、帰納法じゃなくて、アブダクション(仮説論証)じゃないの? しかも、たいして納得感ない仮説だし。というのが私のコメントでした。
しかし、後で知ったのですが、これも説明してくれた方が悪いわけではないのです。そう書いてある本があるのです。この本はコンサルタントの人たちがよく推薦する本で、バイブルとまで言う人もいますが、個人的にはおすすめしません。
※「考える技術・核技術」バーバラ・ミント著 (ダイヤモンド社 1999年) P.82 より引用
ちなみに、アブダクションですが、帰納との区別のついていない人は多いのですが、繰り返していることを一般化するのが帰納で、うまい説明をつけるというのがアブダクションです。帰納法だと 「世界中の戦車がポーランと国境にいるんじゃないか?」 くらいの仮説になるはずです。
アブダクションを広義の帰納とする立場もあるのですが、そのときには、狭義の帰納は「枚挙型帰納」と呼ぶので、どっちみち、区別はあります。
これもわかった上で、やっぱり区別は不要という人もいますが、私は区別した方が良い派です。理由は根っこはおなじですが二つあります。
ひとつは帰納は人間の本能に根ざした学習の基礎なので、無意識かつ自動的に発動されています。ひょっとすると動物すらしています。一方、アブダクションは高度な思考力がないとできません。
もうひとつは仮説の検証方法が違うからです。どちらも仮説を立てているのですが、枚挙型帰納は、同じ事象の繰り返しを確認することで検証できます。アブダクションだと、もっと良い説明がないかの確認と、その仮説が正しいとしたときに起きているはずの事実を見つけにいくことで検証することになります。
じゃあ、ポーランドの国境に戦車がいるときの、もっと良い説明はあるのかといわれると、5年前の紹介時にはなかったのですが、今の日本にはあるのでびっくりです。
「ポーランド国境で戦車道の試合があるのではないか」
よくそんなこと思いつきますね。日本のポップカルチャーおそるべしです。