一日も早い復興に向けて

2011年3月11日に東北地方で起きた巨大地震とそれに続く大津波は、日本全体を深い悲しみで覆いました。そして、追い打ちをかけるように発生した原発事故により、大自然の力の前での科学技術の無力さを見せつけられました。数万人に上る死者と行方不明者、被災現場の惨状、住み慣れた街を追われた方々の無念の前に、言葉を失います。

この未曾有の災害に被災した方々には、心よりお見舞い申し上げます。

私は震災の前と後ではすべての活動の意味が変容したと思います。震災の打撃は被災された地域にとどまらず、これまで進行していた日本の国際的な競争力低下を一気に進め、危機の淵に立たせるほどのものです。一日も早くこの危機を克服し復興に努めることが、日本に住むもの全員の責務となったのです。自分のみの利益を追求し勝ち組でありたいという意識ではもうやっていくことはできません。

大自然の力が有無を言わせない意識転換を私たちに強いたと言えるかもしれません。2011年は、この先日本の歴史の転換点として記憶されることになることでしょう。

この文脈の中で、私が取り組みたいことは、日本の現場主義を支えるノウハウの理論化と体系化です。私がピースミール・テクノロジーという会社として進めていることは、システム開発におけるプロジェクトマネジメントの現場的なノウハウの体系化であり、また、個人が進めているMALTは、日本の現場主義と共存し得るコンサルティング手法の体系化です。

欧米に比べ、日本は現場のメンバーひとりひとりのプロフェッショナル意識の高い国だと思っています。反面、トップのリーダーシップが弱く合議制のために意志決定の速度が遅いなどの問題点もあります。バブル以後の経済環境では、むしろ後者を克服すべき課題と捉え、主として外資系のコンサルティング会社が中心になって会社トップに対するトップダウンでの戦略策定アプローチを是として進められてきました。

しかし、本当にそれが良かったのかについて、今一度総括する必要があるのではないでしょうか。私はトップのリーダーシップの強化を否定はしませんが、それだけではプチ欧米スタイルの企業になるだけであり、競争力は得られないのではないかと思っています。一人一人の能力を向上させ、さらに現場を強くすることによって、日本らしく次の成長をしていく道があるのではないか、そう信じています。